蛍と太陽

ヒトデとクラゲに別れを告げ
一番星の明かりを頼りに
泳いでいた妖精は
水面を見つけると
トビウオの如く


「ふぅ、地上の空気は
やっぱり美味しいなぁ」


そんな呑気なことを呟きながら
妖精が顔を上げると
そこには
夜とは思えない
まるで白夜のような光景が
広がっていました


「うわぁ、痛い!
なんて眩しいんだ
瞳が潰れちゃうよ」


妖精が強い光に
戸惑いながらも
よくよく目を凝らして
見てみると
そこは白夜などではなく
太陽のような
光を放った
一匹の蛍が
そこに浮かんでいた
だけでした


「こんばんは
驚かせてしまったようで…
私はホタルです
貴方様はどちら様です?」


「あ、えっと
僕はニルノラフ
旅の妖精です」


なんとも低姿勢な
蛍につられて
妖精も真似て返します


「旅の妖精さん!
かっこいいです!
憧れます!」


蛍は興奮に
お尻をキラキラと
光らせています


「いいや大したものではないよ
ホタルの方が
よっぽど凄いじゃないか
そんなに強く光ってさ」


妖精は
蛍の光に負けないくらいに
キラキラとした
眼差しで言いました


「いいえ、私なんて
ただピカピカと
光ってるだけです
私の大尊敬する
太陽様は
もっと光彩で
そして暖かいんですよ」


蛍は妬むように
口を尖らせると
恥ずかしそうに
お尻を隠しました


「果たしてどうだろう?
君が言う太陽様とやらは
本当に光彩に
値するだろうか」


妖精は
そう呟きながら
太陽男を
思い浮かべていました


「それにホタルが
太陽様に憧れるように
誰かがホタルに
憧れることだって
あるはずだよ
複製なんかじゃなく
君自身の光に
ちゃんと誇りを
持っていればね」


「私も誰かの憧れに…?
そんなこと
考えたことも
ありませんでした」


蛍は忘れかけていた
自分自身の光のことを
思い出しました
そして、あれだけ
強く光っていた
蛍の光は
直視できるほどまで和らぎ
やがて
虹色の輝きを
放ってみせたのです


「わあ、とても美しいよ
きっと強い光だけが
眩しい光ではないんだね
自分自身に
誇りを持った光こそが
唯一無二の
眩しい光となれるんだよ」


妖精は
興奮した声で言います


「有難う御座いました
貴方のお陰で
私は私の光を
思い出す事が出来ました
この御恩は生涯忘れません」


今宵は白夜
太陽の眠る白夜
小さな蛍の光彩は
大きな太陽より眩しく
その輝きを
放ち続けました
誰かにとっての太陽として
誰かの憧れとなって