パペット

 満員御礼
大歓声
本日の天気は
晴れのち月光
照らし操る太陽男と
傀儡人形月男


「月男よ!
我が照らす光から逃れること
それ即ち
絢爛なりし三日月を終え
光明無き
三日石になる
ということであろうが
覚悟はあるのか?」


 太陽男は
より一層強く光り
そう言い放ちました


「私は
誰かの光を纏うのを
終えるのです
決して光を失うわけではない
私は私の中の光を探す
恒星と成る旅へ出たいのです」

 
月男は少し欠けた瞳で
そう答えました

 
「貴様の中に光だと?
そんなものあるわけがなかろう
貴様は我の輝きが尽きるまで
我の光を纏って
生きてゆくのだよ」


太陽男が
蚊を潰すような声色で
そう言うと
遠くからなにやら
騒がしい音が聞こえてきました


「お取り込み中失礼するよ
太陽男さんの言ってること
なんだか面白おかしくて
呆れちゃうよ」


突然
列車が現れ
その小窓からは
小さな妖精が顔を出しています


「彗星列車の時間か
それよりなんだ小僧
我になにか文句でもあるのか」

 
太陽男は余裕を演じ
呆れ返すように言います


「文句なんてないよ
ただ
こんな小さな世界で
100を知ったようなことを
言ってるあなたが
なんだかおかしくてさ」


「ガキが知った口をッ!」


今にも
爆発しそうになりながら
太陽男はグッと堪えました


「月男さん
こんな狭い世界
さっさと抜け出してさ
ゼロの街へでも行かないかい?」


「ゼロの街?
そこにはいったい
なにがあるんだい?」


月男は
初めて聞く言葉に
興味津々です


「そこはね
君の知らない街
君のことを知らない街
はじまりの街とも
呼ばれているね」


そう言うと妖精は
銀河行きの切符を
月男に渡しました


「さあ銀河行き
最終列車だよ
もちろんゼロの街へ繋がってる
さあ、どうするの?」


妖精は
出発のベルの音に
急かされながら
そう言いました


「乗るよ
私は私の中の
光を探す
旅へ出よう」


月男は
銀河行きの切符を
握りしめると
満月のように
輝く瞳で
そう言いました