星空競争曲

(次はゼロの街〜ゼロの街〜)


月男を見送った妖精は
彗星列車に揺られ
終点の銀河を目指します

 
目的は一つ
地球で数えるところの
四千年に一度行われる
女王星の祭典
一番星祭を一目見るためです


「わあ、なんて綺麗なんだ」


妖精は興奮し
顔を乗り上げると
落っこちそうに
なってしまいました


「おっと、坊や危ないっ!」


帽子の男が間一髪で
妖精を拾い上げます


「ビックリした〜
危ないところをありがとう
それにしてもキレイだよね
この光の粒にも
名前ってあるのかな?」


妖精は
またその宇宙に
散らばる光の粒に
夢中になっています


「星ころだよ
今宵決められる
一番星という称号は
その星ころ達が
星芒を競い合い
より強い光を放った
星ころだけに
与えられるものなんだ」


帽子の男が
目を輝かせて答えます


「ふーん
競い合うだなんて
妖精や人間と
変わりないんだね」


妖精が
星ころを眺めながら
言いました


「それはそうさ
欲望が生まれる限り
争いは絶えないものだからね
それに命というものは
元は個々の
小さな宇宙なんだよ
僕も君も
立派な星ころってことさ」


帽子の男は
悪戯にクスッと笑うと
全身がみるみるうちに
光でいっぱいになりました


「おっと
もう行かないと
祭典が始まっちゃう」


「君も目指すんだね」

 
妖精は
その光には
驚いていない様子です


「そうだよ
私は帽子星
今宵
一番星になる星ころさ」


帽子星は
そう言うと
綺麗な流れ星になって
女王星の光の中へ
消えていってしまいました


(まもなく銀河〜銀河〜)