海星と海月

一番星祭を
満喫した妖精でしたが
今更ながら
彼は片道切符しか
持ってなかったことに
気がつきました


と、そこに
運良く先ほど出逢った
帽子星を
見つけたので
事情を話したところ


「それじゃあ
これを貸してあげよう」


そう言って
少し大きめの
カプセルのようなものを
くれました


「これは流星カプセル
といってね
指定した惑星へ
落ちていけるカプセルさ
これに乗って
気をつけて帰るんだよ」


「わあ助かるよ」


そう言うと
妖精は
早々にカプセルへ
乗り込み
行き先を地球に
セットしました


「あ!そうだ!
友人がしばらく前に
地球へ墜っこちて
しまったみたいなんだ
会うことがあれば
よろしく
伝えておいてくれ」


「わかったよ
いろいろと親切に
ありがとう
そして
一番星おめでとう」


妖精は
帽子星に別れを告げると
あっという間に
流れ星になって
地球へと落ちていきました



ジャボーン!!
ここは海底
宇宙とはまた違った
美しい青が
広がっていました


「海というのも
キレイなものだなぁ
でもなんだか
真っ暗だな」


そうこうぶつぶつ
独り言の
泡を吐いていると
フッと小さな光が
近づいてきました


「星ころ?!」


妖精はびっくりして
咄嗟に叫びました


「あわあわっ!
君さ!今
星ころって
言ったよね?!
ひょっとして
銀河から
落ちてきたの?!
だってそれ
どこから見ても
流星カプセルだもん!!」


その光は
興奮を纏った泡を
次々と飛ばしてきます


「そうだよ。
帽子星に借りたんだ
と言っても
もう返せやしないか」


妖精は
ボロボロに錆びた
流星カプセルを
横目に
微笑を交じえ答えます


「あわわ!
帽子星だって?!
まったく
お人好しの
あいつらしいや」


暗闇の中で
小さな光が
フッと笑ったのが
わかりました


「ん?もしかして
地球に落っこちた
星ころって
君のこと?」


「おいおい
落っこちたなんて
ドジな言い方は
やめてくれよ
オイラは独りになりたくて
旅に出たのさ
それと
オイラの名前は
ウミボシ
ヒトデなんて
呼ばれてる
よろしく」


ヒトデは
エッヘンと
自己紹介をしてみせました


「ウミボシか。
僕はニルノラフ
よろしくね
ところで
君が乗ってる
それはなんだい?」


「あー、こいつはクラゲ
月みたいで
美しいだろ?
オイラの親友なんだ」


クラゲは
妖精と目も合わさず
じっとしています


「ふーん、あれ?
独りになりたかったんじゃないの?


妖精はキョトン顔で問います


「まあ、それはそうなんだけどな
旅をしていると
いろいろあるのさ」


ヒトデはクラゲの
頭を撫でながら
優しい泡を飛ばします


「ふーん、僕も
旅をしているけれど
友達なんていないな」


妖精は
珍しく寂しそうな泡を飛ばしました


「あわあわ、何言ってんのさ
君が勝手に
そう思ってるだけで
案外みんなは友達だと
思ってるかもよ?」


「そういうものかね」


「関係なんて曖昧なもんさ」


ヒトデは肯定の泡を飛ばしました


「あわあわ、じゃあ
今の妖精に
ピッタリな
いい物語を聞かせてやるよ
星と月の
友情物語ってやつをな」


そう言うとヒトデは
美しい物語の
泡をゆっくりと
飛ばし始めたのです