CPyou

「ここはどこだろう」

 
絵本の世界にいたはずの妖精は
いつの間にか
眠っていたらしく
気がつくと
記憶の樹海に
迷い込んでいました


中心部には
それはそれは立派な
大樹が眠っており
その根っこから伸びる
無数の記憶の繭には
様々な命の呼吸が浮かんでいます


「まるで脳みその中に
いるみたいだな」


妖精はそう呟くと
ある一つの記憶に
話しかけてみることにしました

「やあ!
僕はニルノラフ!
妖精の旅人さ
お兄さんは誰?」


青年は突然の質問に
戸惑うことなく答えます


「忘れてしまったんだ
なんだか長い間
眠っていたような感覚だよ」


「ふーん、なるほどね
じゃあ隣の女性は誰?」


「忘れてしまったんだ
なんだか長い間
眠っていたような感覚だよ」


「ん?それさっきも聞いたよ」


妖精はなんだか
不気味な気持ちになってきました


「会話にならないな
外側からの接続は
遮断されちゃうのか」


 妖精は心を決めると
息を止め
青年の記憶の繭へ
飛び込みました


「やあ、僕はニルノラフ
旅の妖精さ
お兄さんは誰?」

 
突然の質問に
青年は一瞬
驚きながらも答えました


「僕は…僕の名前は…」


これは
そう遠くない未来の物語
ある一人の青年の
記憶を巡る物語